皆様、お世話になっております。
今回は、前回の日本眼循環学会のシンポジウムを振り返りたい思います。3つすばらしいシンポジウムがありましたが、そのなかで、シンポジウム3「若手が挑む!徹底討論 Pros&Cons」、覚えておられますでしょうか。オーガナイザーを福嶋先生(大阪大)、坪井先生(愛知医大)、福山先生(兵庫医大)が担当され、5つのテーマについて、それぞれ2名の演者が対極に分かれ、徹底的に討論されていました。その中で緑内障診療におけるOCTAについては、必要VS不必要を、名古屋大の冨田先生、岐阜大の犬塚先生がそれぞれ担ってお話されていました。今回は、そのお話を振り返りたいと思います。また、ディベートでは必要、不必要に分かれてお話されていましたが、本当のところはどう思っているの?というところもうかがってみました。
第41回日本眼循環学会「若手が挑む!徹底討論 Pros & Cons」において、「緑内障診療におけるOCTAは必要」という立場から講演の機会を頂きました。
緑内障診療における現在の標準的検査は、視野検査と光干渉断層計(OCT)による構造評価です。しかし視野検査は自覚検査のため変動が比較的大きく、網膜神経線維層(RNFL)厚などを測定するOCTは早期診断に有用な一方、緑内障が中期、後期に至ると、更なる菲薄化を検出できなくなる「フロア効果」が生じるという問題があります1, 2。また、近視眼では眼軸長延長の影響により評価が難しくなるといった課題もあります。
こうした弱点を補うべく、OCT Angiography(OCTA)の活用が期待されます。OCTAで得られる血管密度(VD)は、RNFL等よりフロア効果の影響を受けにくいとされています1。これは、VD減少が網膜厚の減少に続いて生じる二次的な変化であることが理由である可能性があります3。実際の縦断データでも、後期緑内障において視野の増悪率はRNFL菲薄化率と相関しないのに対し、VD減少率とは有意に相関すること等4, 5が示されており、後期の経過観察におけるOCTAの有用性が示唆されています。
近視眼の評価においてもOCTAは有用である可能性があります。眼軸長による網膜像の拡大率の差異に伴う誤差は、RNFL厚よりVDの方が少ないと報告されています6。さらに、OCTAで観察される乳頭周囲脈絡膜におけるMicrovasculature Dropout(MvD)は篩状板の血流障害を反映し、緑内障病勢と関連する7等、OCTAに特有の評価指標も存在します。
進行期や近視眼の評価、そして新たな指標をもたらすOCTAは、緑内障診療に「必要」な検査となるポテンシャルがあると考えられます。
【本当のところは】 討論では「必要」の立場からOCTAの強みを述べましたが、VDの標準データベースが搭載されていない点や、測定におけるノイズ、検査毎の変動の大きさ等、実際に日常的に使用するにはまだ壁があると感じています。今後の測定・解析・画像処理などにおける技術進歩に期待しています。
第41回日本眼循環学会シンポジウム「若手が挑む!徹底討論 Pros & Cons」において、私は「緑内障診療におけるOCTAは不必要」という立場から発表させていただきました。OCT Angiography(OCTA)は造影剤を用いることなく、黄斑部や乳頭周囲、視神経乳頭の血流を非侵襲的に評価できる魅力的な検査です。層別解析や定量評価が可能であり、特に中後期以降の緑内障では、従来のOCT構造指標で問題となるfloor effectを補う可能性も期待されています。
一方で、日常診療において「必ず必要な検査」と位置づけるには、現時点ではまだ慎重な解釈が必要と感じています。OCTAでは、眼球運動、瞬目、固視不良、焦点ずれ、中間透光体混濁、セグメンテーションエラーなどにより、画像不良やアーチファクトが生じることがあります[1]。そのため、血管密度の低下が真の灌流低下を反映しているのか、撮影条件や画像処理の影響なのかを判断する際には注意が必要です。また、OCTAの再現性はOCTの厚み指標と比較して劣る可能性があり[2,3]、緑内障のように長期的な変化を追跡する疾患では、測定値の変動をそのまま病勢の進行と考えない配慮も求められます。さらに、糖尿病、高血圧、心血管疾患、神経変性疾患、自己免疫疾患など、全身状態が眼血流指標に影響し得る点も重要です[4]。
したがって現時点では、OCTAはすべての緑内障診療に一律に必要な検査というよりも、症例を選び、画像品質や背景因子を十分に考慮したうえで活用していく検査と考えています。
【本当のところは】 OCTAには大きな可能性があると感じています。特に強度近視眼や後期緑内障など、従来のOCT評価に限界がある症例では、今後重要な情報を与えてくれる検査になり得ると思います。ただし、より広く日常診療に活用していくためには、撮影条件、解析方法、結果の解釈について、さらなる標準化が必要です。今回「不必要」という立場からお話しすることで、OCTAをより適切に臨床応用するための課題を共有できれば幸いです。
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