いよいよ開催が迫る本学会の大きな見どころについて、注目の2つのテーマを取り上げてご紹介いたします。まず、柴友明先生(国際医療福祉大・成田)による「全身疾患を診る眼、眼から読む全身」です。レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)を用いた最新の眼脈波解析に着目し、眼底から脳・心血管病リスクや血管機能障害を捉える試みです。近年影の薄くなっていた「眼底所見による全身評価」の価値を再定義する内容であり、聴講する先生方にとっては、日々の眼底検査に新たな視点が示されるとともに、内科等との付加価値の高い連携へと直結する大きなメリットが得られます。続いて、東出朋巳先生(金沢大)による「眼循環からみた治療効果の評価:緑内障(メディカル)」です。LSFGやOCTAを用いた最新の血流評価をもとに、薬物治療による血流改善が、眼圧から独立した新たなサロゲートアウトカム(進行予測バイオマーカー)となり得るかについて考察していただきます。全身管理へのアプローチから専門性の高い緑内障治療まで、眼循環医学の「現在地」と「未来」を網羅した極めて濃密なプログラムです。本学会での熱い議論と学びが、皆様の明日の診療の糧となることを確信しております。
第42回日本眼循環学会シンポジウム1で「全身疾患を診る眼、眼から読む全身」について眼血流の観点から講演させていただきます。古くから我々眼科医は脳・心血管病のリスク予測(動脈硬化)に対して眼底検査を行い網膜血管の状態をSheie氏分類、Keith-Wagener氏分類等に適合して内科や循環器医に還元してきました。残念なことに近年、脳・心血管病リスク予測については眼底所見の影はうすくなっています。そこで我々眼科医が再度全身状態の把握に貢献する医療を目指し研究を行ってきました。具体的にはレーザースペックルフローグラフィー(LSFG)を用いた眼血流解析に着目しました。LSFGの眼血流解析項目は多岐に渡りますが、今回は眼血流の脈動内変動を解析する眼脈波解析に焦点をあてて講演します。眼脈波とは左心室から駆出された血流(脈動波)が弾性動脈から筋性動脈、そして網膜細動脈へ至った脈動波形の最終形態を表します。そして血管が創り出す血流とはいかにしなやかな定常血流を末梢臓器に送り届けるかを目的としてデザインされています1)。
眼脈波解析も多項目ありますが、視神経乳頭領域のBlowout score (BOT)は加齢や脈波伝播速度2)、末梢血管抵抗と有意な相関があることを報告しました2,3)。また頸動脈超音波検査においてmean intima media thicknessの肥厚度とBOTが、プラークスコアとBOSが関連することを示しました4)。また、心臓超音波検査の研究においてRising rate(RR)は左心室収縮機能障害、BOSは左心室拡張機能障害を検出し得ることを明確にしました5)。一方、多数健常人の研究において眼脈波には大血管機能と乖離した性差が存在することも明らかになりました6)。まだいろいろと課題は残りますが、今後の研究の進展により脳・心血管病の重要な危険因子である多彩な動脈硬化、及び血管機能障害に対してLSFGが映し出す眼血流解析は有用な生理機能検査になり得ると考えます。
第42回日本眼循環学会シンポジウム2「眼循環からみた治療効果の評価」において、「眼循環からみた治療効果の評価:緑内障(メディカル)」というテーマを担当させていただきます。
緑内障治療において、明確なエビデンスに基づき進行抑制効果が確立している介入は眼圧下降です。数々のランドマーク試験の中でも、Early Manifest Glaucoma Trial (EMGT)では、眼圧が1 mmHg下降することによって、緑内障進行が約10%低下することが示されました1)。さらに、United Kingdom Glaucoma Treatment Study(UKGTS)では、ラタノプロスト点眼がプラセボと比較して視野進行リスクを有意に低下させ、眼圧下降薬による視野進行抑制が無作為化比較試験によって初めて示されました2)。しかし、緑内障は多因子疾患であり、眼圧以外にも視神経乳頭部における循環障害などが発症および進行に関与することが報告されています3-6)。このため、薬物治療による眼循環の改善は、眼圧下降に付加的な治療効果として臨床的意義を有する可能性があります。近年、レーザースペックルフローグラフィや光干渉断層血管撮影によって、視神経乳頭部血流の非侵襲的かつ定量的評価が可能となりました。これらの画像解析装置を用いて、タフルプロストやROCK阻害薬などの緑内障点眼薬投与後に視神経乳頭部血流が増加することが報告されています7-9)。
視神経乳頭部血流は薬物治療により修飾可能なパラメータであり、近年は緑内障進行予測バイオマーカーとしても注目されています。今後、治療に伴う血流変化と緑内障進行抑制との関連が明らかになれば、血流指標は眼圧とは独立した新たなサロゲートアウトカムとして位置付けられる可能性があります。本シンポジウムでは、緑内障進行と眼血流障害との関連、および薬物治療による眼血流改善に関する知見を整理し、血流パラメータが緑内障薬物治療の効果評価における新たなアウトカム指標となり得るかについて考察いたします。
ページトップへ戻る